ふたご王子に恋をした
「…最近の俺は…俺じゃない…みたいで…自分のことがよくわかんねぇ。」



途切れ途切れにポツリと答える陽の声に耳をすませる。


自分がよくわかんないって…今のあたしみたいだ……



「……麻衣と…話せば話すほど気持ちが…揺らぐ…どうかしてる…」


「………陽?」


抱き締める力がより一層ギュッと強くなる。



「……正直に言ってほしいんだけど………お前、旭のこと、好きなの…?」




え………?


切なそうに、どこか寂しそうな声でそう言われた瞬間、旭の顔が浮かぶ。


胸が…苦しい…



旭のことちゃんと考えなきゃって思ってたのに、陽にもドキドキしてる……



ふたりにドキドキしてる…



あたし…最低だ…




何も言えずに黙っていると背中に回っていた腕がそっと離れ、力ないあたしの手を優しく握った。





「……ごめん、言いたくないなら言わなくていい。」



「…違う、陽……っ…」



「麻衣ー?いるー?」



陽の手を握り返し顔を上げたとき、千夏の声が幕の向こうから聞こえた。

< 257 / 389 >

この作品をシェア

pagetop