いちばんの星


そんなミュリエルに優しく差し伸べられた手…



その手の主は使用人頭のエルトだった。



エルトを見てミュリエルは慌てて立ち上がると「ありがとうございます」と頭を下げその場を立ち去ろうとした。



「待って…少しお話をしませんか?」



そう言われ、ミュリエルはエルトの部屋へと招かれた。



使用人頭のエルトの部屋は心なしか広く感じたものの、ミュリエル達の部屋と大差なかった。



部屋へ入るとエルトは温かい紅茶を入れてくれた。



そして、ゆっくりと話し始めた…



「国王様が…ヴェルヌ様があの様に女性関係が派手になられたのはもっとずっと幼いときからだったわ…」


―――――


ヴェルヌが生まれてから、体が弱い母の代わりに面倒を見ていたのはエルトだった。



ヴェルヌは自由に育てられすくすくと成長し、一人前の美しい王子へと成長した。



そんなヴェルヌが初恋をしたのはとある令嬢だった。



ふたりはとても仲がよく純粋なヴェルヌは彼女に心から惹かれていた。



しかし、彼女は違った。



彼女が惹かれていたのは"ヴェルヌ"ではなく、"未来の国王"としてのヴェルヌだったのだ。




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