【完結】─続─泣き虫姫のご主人様





「ななななな! 何言って!」



 この人に羞恥心は存在しているのだろうか。



 はぁ……















 いつのまにか涙は乾き、携帯を持つ澪の手には力が入っていた。



 弱々しくなんかない。




 ずっと、声を聞いていたい。



 行動が、気持ちを素直に表していた。















 澪が真っ赤になっていると、ふふふと軽い笑いを漏らす稚尋の声が聞こえた。


 不思議になって、澪は小さく、何? と聞き返した。








 やっぱり、つらい表情の稚尋より笑顔の稚尋がいい。


 泣きそうな声より、ふざけた明るい声がいい。




 あたしに、幸せをくれる稚尋がやっぱり好きなんだ。









〔……元気、出たな?〕



「えっ」




〔俺はさ、澪が好きだよ〕





 これはこれは……

 また熱が上がりそうだ。




 というか、既に澪は携帯が壊れるくらいの力でにぎりしめていた。


 それがやっとだった。









 半年以上も付き合っていても、稚尋の行動に慣れる事はない。










< 181 / 256 >

この作品をシェア

pagetop