月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
あたしと淑恵は警視庁の隣りにある喫茶店に入った。

庁内の食堂は一般開放されていない。

あそこに入れる一般市民はヤツだけだろう。

「まさか、リカちゃんのお母さんが淑恵だったとはね。驚いたわ」

リカちゃんを見た時どこか見覚えがあったのは、淑恵の面影があったからだった。

淑恵はあたしこそ、と言って笑った。

「理花の口から麗美の名前を聞いた時は、まさかと思ったわ」

リカちゃんに卒業アルバムを見せたところ、この人だと言ったそうだ。

どうやらあたしは中学の時から顔が変わってないらしい(童顔と呼ばれたことはないのだが)。

卒業名簿を調べたところあたしが刑事になっていたことを知り、今日こうして訪ねてきたというわけだ。

「母娘そろって麗美に助けられるとはね」

「リカちゃんて、いじめられてるの?」

一瞬、迷ったが、思い切って訊いてみた。

「なんて言えばいいのかしら…」

淑恵は目を伏せた。

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