月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
「裏のお婆さんや大家さんに気付かれないように実地調査もしてくれたみたい」

「科捜研にあたってくれた里見さんに感謝だな」

あたしはうなずいた。

そしてあたしたちはリカちゃんの退院祝いに送るためのケーキを買いに向かった。

ケーキ屋で達郎はビターチョコケーキの購入を主張したが、あたしは却下し【あまおう】の乗ったイチゴケーキを買った。

「あの店の一番人気はチョコケーキなのに…」

「小学生にビターチョコ食べさせてどうするの」

そんな会話をしながら店を出た。

「ねぇ達郎」

ケーキを右手にさげたあたしは、ずっと気になってたことを口にした。

「あんた今回やけにムキになってなかった?」

「そうか?」

病院で淑恵に言った台詞はマイペースな達郎らしからぬものだった。

そのへんを突っ込んでみたら達郎は何とも言えない面持ちで頭をかいた。

「昔のことを思い出したんだよ」

「昔のこと?」

「あれは6歳の時だったな」

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