香る紅
「・・・」

ちゃんと目が覚めた時は、すでに次の日の朝だった。

補助剤を飲んでたっぷりと寝たおかげか、体の調子はほぼ戻っていた。

が、時計を見るとすでにぎりぎりの時間で。

私が起きると、秋野さんと美詠子さんが必至の剣幕で寄ってきた。

「やだ、あと30分しかないわよ!」

「着替え!お化粧!ごはんー!」

二人が急いでくれている中、私は夢か現かわからない、緋凰の笑顔が忘れられなかった。

今はもう熱を感じない右手が、やたらと寂しかった。




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