香る紅
「ひおう・・・。」

「なんだ?」

目元の涙をぬぐってくれる。

緋凰が優しい。

もっと、近くで感じたい。

「ふとん、やだ・・・。」

最初の名残で、布団ごと抱きしめられたままなのが、なんだか嫌だった。

まともに意味の通っていない言葉を紡いだにも関わらず、ちゃんと意図を理解してくれたらしくて、布団をはいで、再度抱きなおしてくれた。

「俺が我慢できなくなっても、知らねぇよ?」

そう、笑って。

「ひおうなら、なんでも、うれしい・・・。」

髪を梳きながら、頭をなでてくれる。

あんまりあったかくて、あんまり幸せで、回復しきってなかった体のせいで、また眠りへと意識を沈めてしまった。




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