千日紅が咲いている
「あ」


 通り過ぎた景色の中にあるものを見て、私は思わずつぶやいた。


「どうした?」


 聞き返してきたヤスを振り返る。


「もう運動会なんだね」

「あー、そうか。もうそんな時期か。懐けぇー」


 ヤスが笑った。


「恵ちゃんと出会ったのもこの時期だったよな」

「うん」

「俺らが団長しなかったら、恵ちゃんと接点なかったよな。学科違ったし」


 普通科と理数科。

 同じ学年でも接点がほとんどなくて、同じ部活とかじゃない限り仲良くなれるようなことなかったと思う。

 私は理数科、ヤスと大輔は普通科。

 接点なんてなくて、3年の体育祭までお互いのことを知らなかった。

 私は生徒会に入っていたから、2人が団長になったことで接点ができた。

 体育祭の準備で私たちは顔を合わせた。

 あれがなければ、大輔と付き合うことはなかった。

 私はヤスと出会うことはなかった。
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