時計仕掛けの宝石箱
もうすでに獣鬼の身体には、数秒前の面影はなかった。

黒い血液が身体の殆どを構成していたらしい。

獣鬼はまるで萎んだ風船のようになり、今やエディリーンの身丈にも満たなくなっていた。

エディリーンは、変わり果てた獣鬼を一瞥し、痛烈な蹴りを見舞った。

萎れた皮袋は虚空を舞い、無様に墜落する。

「‥ねぇ‥」

突然、エディリーンは誰ともなく闇に語りかけた。

傍目から見れば獣鬼に話しているようにも見えなくはないが、エディリーンは自我すら持たない獣鬼に、自ら声を掛けたりはしない。

もちろん、独り言でもなかった。

闇は返答しない。



が、



「なぁんだ。やっぱ気付いてたの?」
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