時計仕掛けの宝石箱
「ではそういう事にしましょう。詳細は‥」

そこでエディリーンは何かに気付いたように、目を泳がせた。

釣られて三人もエディリーンと同じように目線を彷徨わせる。

不明瞭な形の光はゆらゆら揺れ、玉座付近を眺める四人の顔に様々な模様を付けて回っている。

少しの間の後、視線を戻してエディリーンは頬を緩めた。

「此処を出てからにしましょう。

ハロルド様の御用命も済んだのに、いつまでも此処に留まっている必要はないわ」

「そーだね」

トーマはうんうんと首を振り、さっさと来た道をなぞり始めた。

その歩調にスキップが混ざっているのに気付いた三人は、アイコンタクトで微笑む。

恐らくこれは、この暗く湿った空気を打破するための、トーマなりの策なのだ。





同じ苦難なら、少しでも楽しもう。





トーマの背には、デカデカとそう書いてあった。

分かりやす過ぎる仲間の気遣いに、三人もようやく緊張を解く事が出来た。

そしてすでに見えなくなったトーマと、急かす彼の声を追って、三人も足を進めた―




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