いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ


ピーンポーン


『はい』


衣緒李の声は
心なしか弱々しかった。


『俺』


『…ちょっと待ってて』



オートロックが解除される。


俺はゆっくりと
衣緒李の部屋に向かった。


俺達…どうなるんだろう。
やっぱフラれんのかな。


まぁ,それはそれで
仕方ないかな。



ピンポーン


久しぶりに見る衣緒李の顔。


『はよ』


『おはよう…弘樹どうしたの?こんな朝早く』


『勇人から電話は?』


『……あったよ』


やっぱり。
表情が雲ったところを見ると,
全部聞いたんだろう。


『そっか。…あがってもいい?』


『どうぞ』


俺達はテーブルを挟んで
向かいあって座った。


話さなきゃいけないのは
わかってる。


でも…
何から話していいのやら…



考えていると,
衣緒李のほうが口を開いた。


『勇人から,いろいろ聞いたよ』


『ん…』


『ごめんね……』



え?

『…なんで謝んの?』


『弘樹が香苗ちゃんと浮気したのはあたしのせいだから…あたしが仕事ばっかで一緒にいられないし…弘樹に無理させてばっかだったから…だからごめんねっ…』


衣緒李は泣きだしてしまった。


『衣緒李…』


『あたしはフラれてもしょうがないって思ってる…香苗ちゃんを選ぶならあたしのことは気にしないでね』


『違う!!違うんだよ』


俺は衣緒李を抱きしめた。


『俺はただ,寂しかったんだよ…だからほんの少し,火遊びしただけなんだ…俺にはやっぱお前しかいないよ…』


『弘樹…ありがとう』


『ごめんな。ほんとにごめんな』


少し乱暴に
衣緒李の髪を撫でる。


ごめん…衣緒李。
傷つけてごめん。


もう絶対しないから。
ずっとお前を守っていくから。




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