いつの日かきっとまた逢おう。その時まで,ほんのちょっとのあいだだけ…サヨナラ


…えっ?


俺は俯きかけていた
顔をあげる。


『パパ,それって…』


『衣緒李が選んだ男に,間違いはないだろう。幸せになりなさい』



…え?


……えっ?!



『弘樹,やったね!!』


衣緒李が抱きついてくる。



…あれ?


『俺,お前に…プロポーズ,してない』


『あっ』



許可もらうほうに気をとられ,
うっかりしていた。



『じゃあ,皐樹さんの前で,改めて。渡邊衣緒李さん,俺と結婚してください』


俺はポケットから
いわゆる給料三ヶ月分を
取り出した。


万が一,ということも考え
常に用意しておいて良かった。



『ばか,いつの間に…』


衣緒李は泣いてた。



『返事は?』


俺が意地悪っぽく尋ねる。



『幸せにしてくれなかったら許さないからね!!』



俺はゆっくり,
衣緒李の手に指輪をはめた。




ようやく,
幸せへの兆しが
見えてきた。





…そんな気がしてたんだ。




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