スイート*ハート~絆のラブリーDAYS~



気まずい思いはしたくないし
させたくない




「迷惑とかじゃないけど
きっと今の時間なら
お母さん、きぃの分も食事の用意を始めちゃってるだろう?」



カチッとガスを止める音と


しゅんしゅんって
お湯の沸いた音



わかってるよ


子供は早く帰りなさいって
言いたいんでしょ?



コトンと
テーブルに湯飲みを置き


「熱いから気をつけて」


そう言いながら
先生は隣に座った




両手で
湯飲みを包むように持って



「ふー、ふー」冷ます



ひじが ぶつかりそうなくらい
そばにいるのに



どうして
こんな気持ちになるんだろう



「お茶、飲んだら送って行く」



「……いいです。
まだバスあるし」



「雨も降ってるし、
送って行くよ」



「先生」


「ん?」


「藤くんに
会いに来てくれるよね?」


「……………」


先生は押し黙り、お茶をすする



「いつか、
来てくれるでしょう?」



「……………いつか、ね」




なんで、
こんな気持ちになるの?



なんで、
こんなこと先生に訊くの?



肩に先生の体温を感じるだけで



胸が張り裂けそうなくらい
ときめく のに



そばに いられて幸せなのに



それだけで充分なのに



『いつか』


それは なんて
頼りない言葉なんだろう





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