*ハナコイ*


その日の夜、私は中庭にむかった。



王子様に…会うために。


王子様が来てくれるかはわからないけど。



私はそっとバラに触れた。



なんだか悲しくなってまた涙がこぼれ落ちた。



昼間あんなに泣いたのに、涙って枯れる事はないんだね。



3日前までは自分もこのバラの一部だった。



その時には王子様と話したいっていう思いだけだったのに…



今は…



あなたに好きになってもらいたい…



いつからこんなに我が儘になっちゃたんだろう。


でも、どんなに思ってもこの気持ちが王子様に届くことはないんだね。



その日、結局王子様は来なかった。



人間になって3日目。



バラの初めての恋は花びらが散るように静かに散った…
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