危険な彼女
キーンコーンカーンコーン…




タイミングよく、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。



奈津は胸に当てていた手を慌てて離し、ぞうきんを片づける。




「あらあら…

恋愛経験がないもんだから、初々しい反応ねぇ………」



「う、うるせぇ!!」




クスクス笑う彩芽を奈津はドアに手をかけたまま、顔だけそらして睨んだ。



そして、保健室から出ようとドアを開ける。





するとそのとき、彩芽は大事なことを思い出したらしく、手をポンと叩いた。




「あっ、言い忘れてたことがあったわ」




その言葉に、奈津は足を止め、めんどくさそうに振り返った。




――またからかう気か?




そんなことを思いながら奈津は彩芽の言葉を待った。





「言っとくけど………


亜紀ちゃんは、あんたにベタ惚れよ?」




――!!?





何を言い出すかと思えば、亜紀が自分に惚れている、とかゆう虚言。



振り返ったのが間違いだった、と奈津は後悔した。




「そ、そんなわけねぇだろ!!?」



「そんなこと言ってぇ…

ほんとは嬉しいんでしょ?
思い当たる節があるんじゃない?」



「嬉しくねぇ!!
そんなことは思い当たらねぇ!!」




奈津は顔を真っ赤にしながら、保健室のドアを荒々しく閉めた。
< 253 / 491 >

この作品をシェア

pagetop