危険な彼女
「よし、んじゃ行くか」




奈津はそう言うと、明るく光る街の方へ足を進めた。




「………え?

行くって…どこに?」



「今日はイブだろ?

せっかくだから街行こうぜ」




桜の表情に驚きの色が見えた。



そんな桜に、奈津はさっと手を差し出す。




「ほら、桜」



「………うん」




奈津の出した手を、桜はゆっくりと握った。




「奈津…」



「ん、どうした?」



「………き」



「は?

………悪い、聞こえなかった」




そう言うと、桜は歯がゆそうに唇を噛んだ。



そして、真っ赤になった表情で、奈津を睨む。




「………もう言わない」



「な、何だよそれ…」




桜は、う〜、と子どもっぽくうなると、意を決したように顔を上げ、奈津を見た。




「………好き」




奈津は隙をつかれたからか、一瞬、情けない顔になった。



だが、次に穏やかな微笑みを浮かべる。




「………俺も」




二つの陰はゆっくりと一つになり、街の明かりにとけ込んでいった。
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