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偽り

ただ、当てもなく歩き続けた。

だらしなく両腕を下ろし、目の前にある道をただただ歩く。

このまま遠くへ行ってしまえたら、そう思いながら。

力なく歩く私には、春の柔らかな日差しも、体を包む暖かな風も、きれいに咲いた花までもが意味のない物に感じられた。

目に映る全てのものが道路と同じ灰色で。

心の中には鉛のような重たい塊がベットリと張り付き、それは重さを増していくばかり。

息をするのも辛い位、私の心を苦しめる。

あの時、電話を取らなければ――。

あの時、相手を確認していれば――。

あの時、いいよ、なんて言わなければ――。

そんな後悔の気持ちがグルグルと渦を巻くように頭の中を混乱させていた。

変な女って思われただろうな…。

明日から、どんな顔をしたらいいの?



足を止めた小さな公園。

ペンキがほとんど剥がれてしまった古いベンチに座り肩を落とす。

視線を膝に落とすと、自然と涙が溢れ出した。

その滴はスカートに落ちて、丸い染みに変わる。

これ位で泣いちゃいけない。

そう思えば思うほど、涙は溢れて止まらなかった。

スカートの染みと心の染みがシンクロしていると思った。

唇を噛み、必死に心を落ち着けようとする。

目を瞑り深呼吸をすると、ベンチを通してカバンが震えてるのに気付いた。

……電話?

…誰だろ。

恐る恐る携帯を取り出すと、チカチカ光るピンクのランプがメールの着信を知らせている。

声もかけずに大学からいなくなったから美里が心配してるのかな。

怒ってるのかな…。

ゆっくりと携帯を開くと、一つ息を吐いて新着メールのボタンを押した。



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