恋と幽霊
男は恐る恐る言葉を選びながら
女の子に話しかける。




「君は…」




男はごくりと喉を鳴らす。




「君は誰なんだ?なぜここにいる?」




男が訪ねても
女の子は依然として



微笑んだまま
何も答えない。



沈黙という名の微笑み。



男はもう一度訪ねる。



「君は誰なんだ?答えてくれ!」



男の悲痛な叫び。



女の子はそんな男の姿を見て
ようやく口を開き始める。



下を向いて言葉を紡ぐ。



「…忘れちゃったの?」



さびしげな表情。
口をほんの少しとがらせる女の子。




男には分からない。



俺はいったい何を
忘れたっていうんだ?



小学生の幽霊に
知り合いはいないはずだが?



男はもう一度
女の子をよく見てみる。



かわいらしい女の子が



ランドセルを背負い
名札まで付けて



そこに立っている。




その時
男の頭に電気ショックを受けたような閃き。



「あ!」


男は夜中なのに大きな声を出して
女の子のある物に注目する。


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