モノクロ
「お前、寝過ぎじゃね?」

「……ごめん、てば」


琢磨はケラケラ笑うと、近くのカフェに入った。


「え? 行かないの?」

「もうちょっとしたらな」


何だろう、と思いながらそれぞれ注文をして、窓際の席に座った。




「お前さ」

琢磨が妙に真剣な顔をしながら口を開いた。


「ん?」

「何かあんだろ? あいつと」


──ストローでかき回していた手が思わず止まった。


アイツって言われて頭に浮かんだのは、やっぱり先生で……。



「誰の、こと?」


誤魔化すように聞いてみたけど、

「久我」


即答で返された。


「…………」


「やっぱりあいつ、お前のこと良く見てる気がするし」

「気のせい、じゃない?」


「……お前、嘘つく時、髪イジるクセあんの、気付いてる?」



そう言われたその瞬間、まさに毛先を指に巻き付けていた。



「…………」



そんなクセあるなんて、今の今まで知らなかった。


「……ま、テキトーに言ってみたんだけど」

「っな!」


琢磨のヤツ……。

琢磨はケラケラ笑うだけで、それ以上何も言わなかった。
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