ショコラ
「じゃあ、俺店に戻るね。ああ、俺の事は名前で呼んで?」
「えっと、高山さん?」
「マサでいい。皆そう呼ぶから」
「じゃあ、マサさん」
マサさんは、私の頭を一撫でして立ち上がった。
「和美ちゃん、またね」
小走りに走って行くマサさんの背中を眺めながら、
彼の言葉の中の、徹の話を思い出す。
『……彼、うちの店の常連なんだ』
私とつき合うずっと前から、通い詰めていたんだ。
しかも、彼女が変わってもずっと?
つき合っている間、
彼はあの店に何か思い出があるとかそんなこと何も言っていなかったのに。