ショコラ
やがて徹が店から出てきて、私は視線をそっちに向けた。


「久しぶり」

「ああ。なんだよ。どうした?」

「ちょっと話がしたくて。今いい?」

「ああ。歩くか?」


徹が先に一歩踏み出し、その後に続く。
背の高い彼の後姿。
柔らかい茶色の髪が歩くとふわふわ揺れる。

とても好きだった。

私の名前を呼んで、振り返る時の顔が。

彼の顔を見た時に揺れる自分の胸の鼓動が。

私を『特別』だと言ってくれた言葉が。

たとえそれが、本物ではなかったのだとしても。


< 67 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop