君のキオク、僕のキオク
夏祭りの日。オレが佐伯を『女子』だと意識したトキ。

佐伯は浴衣だった。ドキドキした。

紺地に金魚の柄が入った浴衣。黄色い帯。髪には黒っぽい花。

りんご飴のことがあって、夜。

8時を過ぎて辺りが真っ暗になりお化け屋敷に向かう。

全て人間がやっているのだが、このために一年掛けてやってんだよ!と言う意気込みが感じられるほどの物だ。

「命懸け・・・・・・えぇっ」

佐伯が呟く。看板に書かれた『命懸けでこいやぁ!』という言葉。何する気だ今年は・・・

「こーいうの、ダメ?」

「んー結構平気だけども・・・やっぱ驚くよね、うん」

まぁね・・・佐伯は入ったこと無いらしいけど、ココは心臓に悪いぞ。

「早く入ろー」

今の時間はステージで恒例の大騒ぎが繰り広げられているので、お化け屋敷に人はほとんどいない。

300円払っておっちゃんの「よっ兄ちゃん、しっかり彼女をエスコートしろよっ」と言う茶化しに赤面しながら佐伯を追いかける。

「あー真っ暗でなんも見えないや」

巾着をクルクル回しながら歩いていく。お化けが脅かしにでてきても「あ、ども」とかなんとか言って歩いていく。

さあ前半終了。後半は・・・・・
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