伸ばした手の先 指の先

始まり


 翌朝。

「ちょっと、琴音ちゃん?」

 葵先輩が教室にやってきた。

「柚季と付き合えないって言ったってほんと?」

「……はい」

「どうしてっ?!」

 ずい、と詰め寄られた。

「あんなに好きって言ってたのにっ」

 その目にたまったものから目を逸らす。

「部活の規則を破らなくても、お互いに好きってわかっていれば、それでいいんです」

「琴音ちゃんはそれでいいかもしれないよっ? でも、柚季の気持ちはどうなるの?!」

 はっとした。

「あんなに落ち込んでる柚季、初めて見たよっ……」

「葵、先輩……」

 後輩の恋を応援する気持ちだけでない、
 その裏側を知った。

 葵先輩は、大辻先輩のことが好きなんだ。

 きっと数知れない葛藤が、あった。

 不安や嫉妬が、渦巻いている。

 それでも、「行け」って言ってくれてるんだ。

 あなたは、どうして。

 どうしてそんなに、強がりなんですか。

 

「ちゃんと気持ち、気づいてやりなよっ……」

 

 ごめんなさい。

 気づかなくてごめんなさい。

 本当にごめんなさい。

 

「今日の放課後、話します」

 

 きっぱり、言わないといけないことがあるから。
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