危険中毒
 
「ねぇ・・。ムーン。」

これって・・?声?

扉を越えるたび、
叫び声のようなモノが
強くなる。

悲鳴?

老若男女とわず、
これは人間の叫びだって、
本能が理解している。


この先で、

何が行われてる?


得も言えぬ恐怖に、
歯がガチガチいう。


「リディア。
お前、シェラザードって
知ってるか?」

ムーンが唐突に聞く。

無言で、首の振りだけで、
否定した。


「教養のないオンナは、
サタンの趣味じゃない。
気をつけろ。
それは、千一夜物語の一節だ。」

彼はそういって、
そのあらすじを
話して聞かせた。


その意図を理解できず、
黙って聞いていた。

「わからないか?
簡単にいえば、
アイツに飽きられたら
用済だって、
いってるんだ。」

「飽きるって・・?」

「頭の悪いオンナは、
アイツの趣味じゃない。
セックス以上に気をつけろ。

アイツは普通じゃない。

世が世なら、
表で暮らせるような
人間じゃない。
せいぜい上手く
はぐらかすんだな。」

ムーンは、
私のほうを見ることもなく、
そういった。

 
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