危険中毒
 

「モニカ。ほら。」


手が差し延べられる。


「ゴウ・・・。」

ダメ。これ以上近寄れない。
躊躇する。

ヤバイと、わかっているが、
その手を取りたいと思うのは、
何かを得たい事以上に、
彼を幻滅させたくないと
いうことだ。


その事が、
大きく心をしめる。

彼が、

『いつか、
好きだって・・・』と、

口走った事が、
起因している点は
否めない。

自分は、拒めないと思った。

人間らしい、その、感情を。

例え、自分が、
モニカではないとしても。

そう、信じ言葉を紡ぎだす彼を
拒めなかった。

彼の、人として残された時間が
そう長く無いことは、
見て取れる。

さっきから、痙攣が続き
吠声をあげる間隔が
明らかに短くなっている。

けれども、私は、

意を決して、
その手を取ろうと、

指を伸ばした。




 
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