麗しのワイルド ビースト
狂犬
【林檎】



この学校に入って半年。



初めての衝撃を受けた。



大きな桜の木が1本ある校舎の裏手。



遅刻ギリギリで近道をしたあたしの目に飛び込んで来たのは…。



風で舞う綺麗な桜の花びらと…。



金色の狂犬だった。



その狂犬が楽しそうに殴ってるのはよく知ってる頭の悪い不良達…。



初めて見るケンカの場面に体が固まってしまった。



怖くて動けない…。



「うっ…」



倒れた不良を容赦なく蹴り飛ばしたその狂犬…。



高い身長と首元のシャツから少し覗くタトゥー…。



『ここから逃げろ』



そう頭の中で解釈したのに恐怖で体が動かなかった。



ひとり立ち尽くすその狂犬は、空を仰いで背伸びをした。



それは見とれてしまう程美しく、一瞬世界がキラキラして見えた。



「なに見てんの?」



初めて聞く声は、少しだけハスキーで…。



結構低くて…。



優しい。



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