あなたが私にできる事



彼は山口くんの顔をじっと見ていた。



「会ったことあるよな?俺たち。」



山口くんが意外そうな顔をする。



「まさか。俺こんな頭いい高校に知り合いなんていないよ?」



「いや…。だけど…。」



まだ何か言おうとする彼を山口くんが遮った。



「神崎さん。電車来ちゃうよ!早く行かないと!」



「あっ…。うん。ありがとう。またね。」



私は二人に手を振って改札を通った。





電車はガラガラだった。
だけど私はいつも通り立ったまま外を見る。



線路と平行して走る幹線道路。


そこから家に帰る山口くんを見るのが好きだった。



それなのに今日はその姿が見えなかった。





代わりに私の目に入ったのは




ビニール傘をさして駅に向かう




和希だった。








< 199 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop