神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
「ゴフッ…。透よ…わしは長くはない、しかと聞け…。
京都へ行き…仲間を捜せ。わしの最後の力で…妖狐を授ける…。」

「でも爺様!両親の力しか受け継げないはずじゃ!!」

僧正の肩を抱いたまま透は叫んだ。

「お前の霊力は高い…生まれた際の儀で、わしの分まで受ける器がある事に気がついた…。
よいな?必ず退魔士……ガハッ」

そこまで言うと、余命を悟った僧正は、震える手で透の額に指を当てた。
その瞬間、透の額に梵字が輝き、力が流れ込むのが分かった!

そして、その指が離れると同時に、僧正の体から力が抜けた……。

「爺様!爺様!目を開けてよ!爺様ぁぁあ」




季節は夏、蝉が鳴く日…。遠野の山奥でひっそりと、一つの退魔士一族が滅んでいった………。
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