神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
第十八章 〜鵺〜
「…多少は昨夜の傷…癒えたかしら?
…私にやれるだけの事はしたわ。…旦那様、褒めてくれるかな?」


昨夜の戦闘で命から何とか逃げ仰せた刹那は、傷を負った体を重そうに動かすと、一夜だけ過ごした山小屋から歩きだした。


さすがに疲れが出ていたのもあって、一度で遠くまでは行けずに仕方なく比叡山にやって来たのだった。


そんな刹那に少しだけ気がかりなことがあった。
いつもならじっと動かない鵺の妖気が、昨夜から移動を繰り返しているのだった。
刹那は自分達を心配してのことかと一瞬喜んだが、あの鵺にそんな感情があるとは思えなかった。


しかし、思う分には自分の自由…もしかしたら褒めてもらえるかもしれないと、刹那は傷を癒す事よりも帰る事を選んだのだった。


「それにしても、一体何処を動き回っているのかしら?先程まで気配すら無かったのに、急に妖力が高くなった…。
この高さは異常よ…旦那様どうしたの?」
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