この空の彼方
八重が手を組む。



そしてぶつぶつと何か唱えた。



氏神の動きが止まった。



そして、首を下におろす。



千歳と耶粗は抱き合ったまま遁走した。



今度ばかりは爪鷹も。



芦多は灯世の前に立った。



「芦多様、氏神様の首についている虫を殺していただけますか?」


「わかった。」



よくわからないが、芦多は腰に差していた太刀を抜いた。



そこを突くようにして虫を潰す。



背後で息をつく気配がした。



「お疲れ様でした。」



灯世が芦多の隣に立つ。



氏神はゆっくりと首を戻した。



「きっと、さっきの虫が力を吸い取っていたんです。
それで氏神様が怒ってらっしゃったんですね。」


「寄生虫ってそこらへんにうじゃうじゃいるもんなのか?」



いつの間にやら千歳と耶粗も隣に立っていた。



「いいえ。
恐らく敵国が送り込んだものかと。」


「ヤバイじゃん。」



ヤバイなんてレベルじゃない。



「このところ攻撃が止んでいたのに。」



芦多は灯世の肩を抱いた。



「再開といったところかな。」


「ってか結局、芦多と灯世になんの関係もなかったじゃん。」



千歳達は八重を睨む。



八重は頭を下げた。



「ごめんなさい。
私の間違いだったみたい。」


「いえ、結果的に大丈夫ですから。」



灯世はにっこり笑って芦多を見上げた。



こつんと額を合わせる。



「ほらほら、見せつけない。」



爪鷹が手を打った。



「はいはい。」



芦多が言うと、灯世も笑った。













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