あなたの隣


なにがそんなに嬉しいんだかよくわからなくて。

ついつい詩桜の顔を凝視してしまった。

でも、悪くない。

昔からそうだった。

こいつは、いつだって、笑ってた。

辛いときだって笑おうとするくらい。

俺とは違って、純粋だと思った。

少し俺には眩しすぎる。

「な、なんです…か?」

「いや?かわいいなと思って。」

なんとなく言ってみた言葉にぼっと音が立ちそうなくらい真っ赤になって、

あぁ、本当にこいつは純真だと思った。

「ばーか。冗談」

くつくつと俺から笑いが漏れ出すのを見てさらに顔を真っ赤にしてぽかぽかと叩いてきた。


「こーら、イテェだろ。」

「お、おじさんが悪い!」

ふっと鼻で笑って勝ち誇った笑みを浮かべてみると、ひどく悔しそうな顔をして、

川の水をすくって俺にかけた。

「ど、どうだ!」

恐る恐る勝ち誇った詩桜が面白くって

「どうって……やりやがったな?お前…覚悟しろ!」







気づけば

いい大人と高校生は、水かけっこなんて幼稚な戦いをしばらく続けていた。






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