あなたの隣




「いいや、多くないよ。大きな子供がついさっき、突然帰ってきたのさ」


え…。


そんな……


まさか、まさか!!


そう言ったおばあちゃんの顔は穏やかで、にこやかで、心の底から嬉しそうだった。





「ばーさん、適当なとこに車停めちまったけど。」



あ…


なんて懐かしい声。

断片的な記憶のなかに確かにあった私の大好きな声。


頭に浮かんだこの声の持ち主との記憶が走馬灯のように駆け巡る。


間違いない



帰ってきたんだ。



帰ってきた!!



体を声のするほうへ向けようとする。


その瞬間はひどく遅く、じれったいほどのものに感じられた。







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