endorphin
「それでそのあとどうなったの」
「なにが」
 彼の言葉を流しながら、さらさらとノートに文字を書き連ねる。シャープペンで紙を引っ掻く感触が俺は好きだった。
 だからあ、と語気を強めて彼が続ける。
「一緒に帰ったのか? 手は繋いだのか? まさかもうキスまでしちゃったんだぜなんて言わないよな」
「はああ?」
 今度ばかりは俺も顔を上げた。明るい色の髪を揺らして河本が俺を伺い見ている。
「だってそうなるでしょ。素敵展開のあとに待ち受けてるのは、男女ふたりのめくるめく恋物語だって相場が決まってる」
 平然とそんなことを言い出す彼に目眩すら覚える。
 笹原桂としばらくふたりきりで過ごしたというだけで、周りに知られたら面倒なことになりそうな話なのだ。下手な尾ひれをつけるのは勘弁してもらいたい。
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