僕らは、何も知らない

 思えば、今まで普通すぎた日常を生きていた。
大した怪我もなく、病気もせずただただ平和に。
まだ人の死も、絶望さえも、これといった経験がない。逆に変なのかもしれないが。
他人の抱えてる問題とか辛さとか、十六年生きて未だに触れたことがなかった。

だから、この高校生活は、俺に影響を与えすぎたように感じた。

今までの恨みをまとめて一気に返すみたいに、でも忘れられないようにしっかり一つずつ、刻み付けやがった。

初めて、しかも沢山の他人の苦悩に出会うことになるこの高校生活。

まだ何も知らない愚かな自分達。

神様の気紛れの、抜き打ちテストだ。
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