【短編】空より広く、海より深く
思い出の中に~みのり~
「樹」

不意に自分の名前を
呼ばれた気がして
門倉は足を止めた。


目線を階段の先に移すと
小さな足が見える。

不安定な足取り
ベージュのズボン
ボーダーのTシャツ。


「樹!」

今度ははっきり
自分の名を呼ばれ
声のした方へ視線を向ける。


逆光に思わず目を細めた。


白い光。
風にふんわりなびく
長い髪。

澄んだ空に
溶けていきそうな淡い色の
ワンピースを
彼女は着ていた。
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