彼の隣りに寝る女
マンションにつくと

いつもは玄関入り口前で降りてバイバイをするだけなのに

その日は車のエンジンが切れた。

私はドキっとした。

というか、アミくんの突然のキス事件を思い出し

そんなことされたら嫌になっちゃうかもと恐縮してしまった。

だけど内くんはそんな人じゃなかった。

無言電話のことを覚えててくれていて

「部屋に入るまでここにいるから安心して。」

そう言って私の電話を鳴らした。

「電話がつながってたら怖くないでしょ?」

「うん。」

私は電話で話をしながら部屋に戻った。

「大丈夫?」

「うん。送ってくれてありがとう。気をつけて帰ってね。」

「ひなっち、またね。おやすみ。」

すごく温かい時間だった。

なのに・・電話を切ってほんの数分で現実に戻る。

いつもの無言の人からの電話だ!

私は電話に出てみた。

すると今日は何か言ってる!

相手はいやらしい声を出していた。

私は怖くて電話を切ったあとすぐ内くんに連絡した。

「また電話があって、でもいやらしい感じだったの。内くんと一緒にいるのを見ていたかもしれない。」

「大丈夫?今ひなっちのとこ戻ろうか??」

「ううん、戻ってきてくれなくても大丈夫。ありがとう。」

「でも・・怖くなったらいつでも電話してきてね。」

私には相談をする相手がいる。

心配してくれる人がいる。

そうして私は彼に対してプライベートでも心を開いていった。

それ以来、内くんは

私を見えないストーカーから守るため

時間の都合がつくときはいつも

大学やお店、そして当時私がとろうとしていや車の免許の教習所にまで送り迎えをしてくれるようになった。

事実、私たちは付き合い始めた。

クリスマスまで1ヶ月ちょっとの頃だった。

私は彼のためにセーターを編みはじめた。
< 8 / 24 >

この作品をシェア

pagetop