六花伝
「…お姉様。」
「なあに?」
幸せか、と聞きたかった。
自分をうらやんだ彼女に、聞いてみたかった。
だけど……
「毬つきしましょう。」
沙希は、目を丸くしたが、満面の笑みで、
「ええ。」と答えた。
誰よりも人の幸せを願う姉の答えは、聞かなくても分かる気がした。
この時はまだ、半年後にこの平穏が跡形もなくなるなんて、誰も予想していなかった。
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