六花伝


「飢饉になるかもしれませんね…。」
沙希は、瞳を伏せた。
もともと水の少ない土地に、今年の日照りで地は乾ききってしまった。
雨乞いも一向にきく様子がない。
美都は、沙希の肩に手をのせた。
想像以上にきゃしゃな細い肩に驚きつつ、その体を抱きしめた。
「お姉様…。」
彼女の命は恐らく周囲の者によって守られるであろう。
長の家の長女が、死ぬ事は、ない。
だが、この人がそれに耐えられるのだろうか…。
「美都、ありがとう。私は、大丈夫ですから。」
沙希は、ふわりと柔らかく微笑んだ。
「本当ですか?」
「ええ。あなたの方が、私は心配です。」
あたしが、養女だから…
確かに、飢饉となった場合、この家の者でない私が、西条の力によって生き延びたら…
亡くなった者の身内は、私をさぞかし恨む事だろう。
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