甘い蜜
「………出ない、の?」
「………あぁ」
やっと目が覚めたらしい麻理亜が上半身を起こしてシーツで体を隠しながら首を傾けていた。
俺は仕方なく溜め息を吐いて電話に出た。
「……はい」
[今から会社に来い]
「は?」
[今すぐにだ。いいな]
「ちょっ……」
一方的に用件だけ言って電話はすぐに切れた。
ツーツーという音だけが耳に聞こえてくる。
………クソ親父がっ……
乱暴に携帯を切って机に置くと、ビクッと麻理亜の肩が震えた。