繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜


 他に好きな人が出来たと告げたら、案の定旦那は怒り狂ったそうだ。


 いくら家庭内別居といっても、当たり前だろう。


 一時は俺のところにも怒鳴り込む勢いだったらしいが、栞がなんとか止めたそうだ。



 娘の親権は旦那に渡し、大事にしていたハチロクは、慰謝料代わりに置いてきたらしい。



 そして、本当に身の回りの最低限の物だけを持って、出てきたようだ。




「馬鹿…馬鹿だよ、栞は。

 俺のためにそんな事まで…」



「うん…馬鹿だよね。

 家族の為に黒猫で働き始めたの
 に、逆に家庭を壊して…。

 あたしは…母親失格だ…。

 男の為に家族捨てるなんて…。

 でも…」


 栞は言葉に詰まり、唇を噛んだ。



「…わかったから。

 もう…言うな…」


俺は言葉を遮った。



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