繋がれた天使〜Siori and Mitsuki〜


栞は抑揚のない返事をした。


「…光基…とりあえず支度したら

 ここ出よっか。」




ゆうべの
俺の腕の中で震えていた
栞の面影は無くて。

少し戸惑った。


普段強気だったり
ごく普通の性格だったりする人が
ベッドの上でだけMになるってのはよくある事だけど――。



栞もきっと
そんなタイプなんだろう。





俺達はホテルを出て、
すぐ近くのコーヒーショップに立ち寄った。


日曜日の朝の新町は、
平日と違い、やっと目を覚ましたような表情。

人通りも少なく、空気もまだひんやりと冴えている。


栞は俺の隣で
カフェ・オ・レを飲んでいる。


そういえば…
昨日はあれだけ喋ったのに、
栞、自分の事はあんまり話さなかったな。



ぼんやり栞を眺めていたら、栞と目が合ってしまった。


俺は今考えていた事を悟られないように、栞に聞いた。


「あ…家まで送ろうか?」


「駅前からバスが出てるから、
 
 そこまででいいよ。

 引っ越しの準備大変でしょ?」



俺に遠慮をしてるだけなのか、
仕事上、家を知られたくないのか

正直…よく分からない。


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