ダチュラな私。

ツインズ



「お邪魔します」

玄関のドアを閉めていると、遠慮がちな小さな声が背中越しに聞こえてきた。

一成でも他人の家では気を遣うんだ。

振り返って見ると一成は靴を脱ごうともせず、その場に突っ立ったままで。

私は一成に気付かれないようにその背中に向かって小さく笑みをこぼした。


「ただいまー」

でも、広くはない我が家の玄関に二人も突っ立っていたら邪魔でしょうがない。

仕方なく私が一成を押し退けるような形で、先に家に上がることにした。


玄関の脇においてある、あまり使われることのない来客用のスリッパを一成の前におく。

すると一成はさっきと同じ遠慮がちな小さな声でありがとう、と呟いたあと。

素早い動作で靴を脱いで玄関の隅に並べたあと、スリッパに足をとおした。
< 119 / 342 >

この作品をシェア

pagetop