ダチュラな私。

しばらく一成の押し殺した笑い声に耐えていると突然、肩に何かをかけられた。

触ってみると、それはさっきまで一成が着ていたパーカーで。

何をするんだと思いながら一成を見ると。


「それ着たまま海に入っていいから、絶対に脱ぐなよ?」

一成はなぜか真剣な瞳で、急にそんなことを言い出した。


例えば一成の顔付きがからかうようなものだったら拒否していたけれど、真剣な顔付きで言われたら拒否は出来ない。

私は首を縦にふって、しぶしぶパーカーの袖に腕を通した。

すると一成はさらに、パーカーのファスナーを上げろと指示してくる。

これは一体、何なんだろう?


「じゃあ行くか」

そう問い掛けようと思っていたのに私がファスナーを閉めたことを確認すると、一成はさっさと海に向かって歩き出してしまう。

私は首を傾げながらも、一成の後についていった。
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