ダチュラな私。

一成はその視界に私を映すと、大きな目をさらに大きく見開いた。

そしてその表情はどんどん変わっていく。

驚いた表情、安心したような表情、悲しそうな表情、怒っているような表情。

だけどたくさんの表情を作っていたその顔から突然、表情が消えた。


「お前……殺してやるよ」


そして男のほうに振り返ると恐ろしく冷たく、それでいて小さな声でそう呟いた。

一成は……本気だ。

本気であの男を殺そうとしている。


「虎!一成を止めて!!」

私は隣にしゃがみ込んでいる虎を揺さぶりながらそう叫んだ。

虎は驚いたように一成があの男に近付く様子を見ていたけれど、私の叫びに我に返ったようにバッと立ち上がる。


「花はじっとしときや」

そしてそれだけ言うと、すでに男に馬乗りになって拳を振り上げている一成へと走っていった。
< 263 / 342 >

この作品をシェア

pagetop