ダチュラな私。

初めて会ったときからそうだったけど、この男は嘘とか偽りに敏感な人間だと思う。

同時にそれらを嫌悪している。

それはこの男が、嘘も付かないし偽ることもしない人間だからだろう。


だからこそ、知らないフリも気付かないフリもしない。

だからこそ、私にも嘘を付くくらいならなにも話すなと言う。

聖羅や爽吾君の真っ直ぐさが柔ならば、この男の真っ直ぐさは剛だ。


でも、だからこそ。
話してみようと思った。


嘘を付くことも偽ることもしないこの男が私の昔話を聞いて、どういう反応を示すのか。

同情もその場限りの慰めもしないだろうこの男が、全てを話し終わったとき。

何を思い、どんな言葉を紡ぐのか。


「……たいしたことじゃないよ。
昔、ストーカーされただけだから」

その真っ直ぐな瞳に私はどう映るのか。

そんなことを考えながら、私は昔話を語り始めた。
< 78 / 342 >

この作品をシェア

pagetop