お狐様と贄の私
恐狐神社に行くと
風の音とそれになびく
木々の音がするだけで
人どころか野良猫すらいなかった。
「何処まで運が無いんだろ私・・・
 それとも運が無いんじゃなくて
 やっぱり無意識の
 方向音痴だったの?」
そう言い途方にくれながらも、
元の場所に戻ろうと
後ろを振り返った・・・・

「~~ッ!」
吃驚し過ぎて転げかけ
声にならない悲鳴を上げると
その人をもう一度見た
何で・・・此処にいるの?
さっきまで物音一つしなかったし
気配もなかったのに・・・

その男は容姿端麗で、
見透かすような猫目のような藍眼、
壱百八拾以上はあろう長身に
どこか妖しさを交えながらも、
煌びやかで艶やかで・・・
着ている着流しのようなものと
扇子がよく似合う
世間で言う超絶美男子であった。
「何て言うか綺麗こんな人いたんだ・・・・」
と思いながら少々見惚れていると
その人は「失礼な」と言いながら
こっちを睨んでいる
「ご、ごめんなさい」と言うと
機嫌を直したように
睨むのをやめてくれた。
「あの、私鏡夜利亞って言います。
 まだ引っ越してきたばかりで、
 お恥ずかしながら、
 迷ってしまったのですが、
 恐狐第一中学校って何処でしょうか?」
と言うと
何だそんな事か・・・・とでも言うように
「此処から出て
 右行ってそのまま真っ直ぐ・・・
 そんな簡単な道も
 わからなかったのか?」
はっバカだなとでも言うかのように、
ため息をつかれた。
「ごめんなさ「こう言う時は
 ありがとうございますだろ?」
と間髪入れず言われ
少々へこんでいると
「さっさと行かなくて良いのか?
 もう七時過ぎてんだけど
 転入生だろ?」
「えっ!!すみません、
 この埋め合わせは必ず!!
 ・・・・えっとお名前は?」そう聞くと
「神谷朱雀」と簡潔に言い
それを聞いた私は
「また会えると良いですね朱雀さん」
と言い学校へと
駈け出した。

「また・・・・か・・・
俺に化かされた事も知らないで・・・」
と不適に微笑し、
社へと戻って行った。

第三夜 狐につままれる 終

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