加害者な君へ、ありがとう

「ねぇねぇ、風間さんっ
あなた矢塚さんと仲いいよねー
親友?何、大切な友達なの?」


人を馬鹿にするような
ものいいに内心ムカッとする
感覚すらも起きないまま
私はただ何も言えずに固まっていた


クラス中の視線が
一瞬にして私に注がれる

「し、親友なんかじゃないです」

「じゃあなんなのさ?」

「えっ…」

「風間さん答えなきゃ
矢塚さんのようにいじめられちゃうよー?」


また嘲笑うかのように
ゲラゲラと声を上げて
人を馬鹿にしている


皆から注がれる視線が怖かった


いじめられるなんてごめんだっ

私は何も悪いことしてないのに
いじめられるなんて嫌だ


「…ただ芽依…っい、いや
矢塚さんが私に付き纏ってくるだけです…
正直うんざりです」


私の声は震えを止めなかった
心にもないことを言ってしまった



こう言わなきゃいけない空気だった、
そう言ったのなら
これは言い訳になるのだろうか?


私は酷いことをした
友達が見ていないからって
酷いことをした

これは本当に思っていることなんかじゃない

私は矢塚さんの裏の性格を
一回でも見たことすらない

なのに心から
うんざりだ、なんて思えるわけでもない

ただ…
自分が助かることしか頭になかった

「このままだったら
風間ちゃんもいじめられるよっ?」


浸すら怖かった


言わなきゃいけない空気だった、

こう言い訳すれば
許してもらえるとでも
思っていたのだろうか?

矢塚さんが見ていないから
言いたい放題言える、
とでも思っていたのだろうか?


違う、そうじゃない
違う?そうじゃない?


私は嘘でも冗談でも
いけないことを言ってしまった



深く深く傷つけたのは
自分の心だったかもしれない







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