だから君に歌を
京平が感情をここまでぶちまけるのは滅多にないことだった。

たいていは誰が何をしようと見守るのが京平のスタンスであるし、
千夏に対してもそうしてきたつもりだ。

ただ、例外は
千夏が勝手に高校を辞めた時と、
そして今。

「千夏、何かわけがあるんだろ?じゃなきゃ、こんな、もし、今言ったのが全部真実だってんなら俺は、…お前を、許せねえ」

許さない。
いくら大事で大切な妹であっても、
許してあげられない。

「…許さなくて、いいよ」

千夏の震える唇が言った。

「嫌って構わないし、仕送りもいらないし、私のことはいないつもりで暮らせばいいよ」

重たい言葉だった。
決して強がりで言っているのではない。
ということが京平にはわかった。

何が千夏をこうまでさせるのか。

さっぱり検討がつかない。

自分は今まで、
一体千夏の何を見て来ていたのだろう。

兄としてわかった気になっていただけで、
実際何もわかっていなかった。
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