俺が大人になった冬
「おかえりなさい」

言いながら、彼女が満面の笑みでドアを開く。

じんわりと心に染み渡る彼女の『おかえり』。

夢ではなかった安心感。

彼女が出迎えてくれた喜び。

喜びや感動で彼女を抱き締めたくなっている気持ちをグッと抑え、中に入る。

「た、ただいま」

久しぶりに口にした言葉は、なんだか気恥ずかしかった。

「忙しかった?」

予想に反して彼女に緊張している様子は全く見られない。

泊まると言っても、彼女の中では『親戚の家に泊まる』的な感覚でしかないのかもしれない。
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