俺が大人になった冬
(14)闇



家に帰ると、マンションの前にすでに彼女の車が停まっていた。

車に近づき運転席の窓を軽く叩く。

彼女はこちらを振り向き俺の顔を見ると、嬉しそうな笑顔を見せ車から降りて来た。

「おはよう」

「……おはよう」

「少しでも長く一緒にいたいと思って、早く出てきてしまったの。でも、早く来すぎたみたいね」

少し照れながら笑う彼女の顔を見て、喜びより嫌悪感が先に立った。ショックが怒りに変わる。母親の妊娠を知ったときよりも、もっと激しいものだ。

彼女に旦那がいることを分かっていて好きになったのは俺の方だ。

自分だって、はじめのうちは彼女に会いながらエリナを抱いていた。

旦那がいれば昼間俺と過ごしたって、旦那に抱かれる日もあるだろう。それによって妊娠したとしても夫婦であれば当然のことだ。そのことを責めるのは間違っている。

けれども、腹にあの男の子がいるのに平気な顔で『少しでも長く一緒にいたい』と彼女は言った。そんな彼女のことが分からなくなってしまった。
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